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(1)ストレスとは
「ストレス」という概念は、今から50年ほど前に、さまざまな環境変化に動物がどのように反応するのかという研究から、ハンス・セリエという生理学者が説いた概念です。
ハンス・セリエは、環境の変化を外的な刺激としてとらえ、「ストレッサ―」と呼び、その刺激による反応全体を「ストレス」と呼びました。
その考え方が、広まる中で「ストレッサ―」と「ストレス」は区別なく使われるようになり、近年ではどちらかというと「ストレッサ―」のことを一般的に「ストレス」と呼んでいます。
(2)2種類のストレス
一般的には私たちは「ストレス」と聞くと、すべて悪いものというイメージしかありませんが、ストレスが人間を進化させてきたという考え方からすると、「ストレス=悪影響を与える外的要因」と考えるのは間違いだと言えます。
ストレスには「重すぎたり、一時期にたび重なったりする」悪いストレスと「人間が成長するために、人生を歩むためにある」良いストレスの2種類があるといわれています。
(3)環境変化に対するストレス感受性
ストレスを感じる能力はストレス感受性といわれ、この感受性は、個体差が大きいばかりか、同じ個体であっても、時と場合によりその程度は変化するといわれています。
平常時にはストレスに対応する能力が高くても、非常時にはその能力を発揮できないこともあれば、ストレスに対応する能力が低くても、何度もストレスに曝されるとその耐性(ストレス耐性)は向上し、対応能力は高まることもあるといわれています。
つまり、適度なストレスの程度は定義できるものではありませんが、過剰なストレスは「そのストレスが原因で起きる不快な生体反応が長期に続く時」と定義されます。
(4)ストレス反応としての精神症状
誰でも、つらい、不安、眠れない、落ち込んでいるなどと感じることはります。これらは、脳科学的に厳密にみれば、すべて精神症状ということができるようです。
原因は、普段と違ったなんらかの環境変化が加わったということで、これらの症状はストレス反応ということになるわけです。
しかし、ストレス反応が出たからといって、それがただちに病気となるわけではありません。一般的には、このような状態は「不調」と表現されます。では「不調」と「病気」とはどのように分けられるのでしょうか?
医学的には、うつ病の障害年金の申請のポイントのところで「うつ病の診断基準」として記載しましたように、これらの「不調」(症状)が、2週間以上途切れることなく続き、どんな些細なことであっても、日常生活に支障が生じているようなら、病気に発展している可能性が高いと考えるとのことです。
(5)ストレス反応が病気へと発展するプロセス
ストレスにより恒常性が崩れると、ストレス反応として心身ともに防御態勢に入り、すべての事柄に対し過敏となります。過敏さは覚醒度も高め、それが原因で不眠症状が出現します。
精神障害には多くの種類がありますが、どの精神障害でも、その初期症状として過敏症状と睡眠障害がみられるのはこのためです。睡眠が障害されると、疲労回復の機能が現れないため、疲労が蓄積してしまい、人間の身体のなかで自動的に行われている維持機能系つまり自律神経系を混乱させます。
これがいわゆる自律神経失調で、さまざまな体調不良が出現します。そのまま改善がみられないと次の段階では、気分の変動が激しくなったり、漠然とした不安や焦燥が出現したりします。
このような状態に移行してもなお原因となるストレスが存在すると、各精神障害に特徴的な症状が出現することとなります。
例外的にストレスの負荷から急激に不調になり、これらのプロセスを経ず短時間で不穏にまで達するケースもあります。
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