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高次脳機能障害の申請のポイント

高次脳機能障害は、器質性精神障害とも呼ばれ、認定基準の一部例示は次のとおりです。

障害の程度障害の状態
1級高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの
2級認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級

1 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの

2 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの

障害手当金認知障害のため、労働が制限を受けるもの

【認定要領】
(1)症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経系等の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものである。
症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
(2)脳の器質障害については、精神障害と神経障害を区分して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合して、全体像から総合的に判断して認定する。
(3)高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となる。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。
なお、障害の状態は、代謝機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。
また、高次脳機能障害による失語症の機能の損失以外も評価できることから失語に関しては「言語機能の障害」で判断し、その他症状は「精神の障害」で判断したうえで併合認定する。
(4)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

高次脳機能障害とは

人間の脳は、どんな最新鋭コンピュータにも負けないくらいの複雑な能力を持っています。
コップをつかんだり、綱渡りをしたり、いろいろなスポーツをしたりするだけでなくテレビや映画を楽しんだり、言葉を使って相手とコミュニケーションをしたり、昨日の出来事を覚えたりするような複雑なことまで脳が関与しています。

このような多彩な脳の働きの中で、他の動物とは違う人間らしい脳の働きを総称して「高次脳機能」と呼びます。いいかえれば「心を」つかさどる脳機能ともいえます。

怪我や病気などで高次脳機能が傷害されると、ぱっと見た感じはふつうなのに、記憶力が落ちていたり、根気が続かなかったり、判断力が低下して、社会生活にうまく適応できなくなることになってしまいます。障害の程度によっては本人ですら気づかないこともあり、周りから理解されにくい障害のひとつと言えます。

 

【高次脳機能障害の主な症状について】
高次脳機能障害になってしまうと、具体的には以下のような症状が出現します。

 

■記憶障害
側頭葉内側の障害により引き起こされる症状。記憶障害は大きく分けると新しいことが覚えられなくなる「前向性健忘」と、昔のことを思い出せなくなる「逆向性健忘」の2つがあります。

具体的には、日常生活の中でも約束を守れなくなったり、大切な物をしまった場所を忘れてしまったり、何度も同じことを聞いてしまったりと、日常生活や仕事をするうえで深刻な問題を抱えてしまいます。

 

■注意障害
前頭葉や頭頂葉の障害で引き起こされる注意障害。物事に集中して取り組むことができず、ちょっとしたことで気が散ってしまうため、本人が集中できる時間に合わせて、適度の休憩を促すことが必要です。具体的には、注意障害により。会話や思考がとぎれとぎれになり、行動の内容に一貫性がなくなったりします。

与えられた仕事をすぐに放り投げてしまったり、人の話を聞きながらメモを取れなくなったり、ぼーっとしている時間が長くなり、呼びかけてもすぐに反応ができなくなったり、といった症状が見られます。

 

■遂行機能障害
前頭葉の障害により引き起こされることが多い遂行障害、計画性をもって行動したり、周囲の変化する状況に対応できなくなります。話したり、書いたり、聞いたり、計算したりするなど、一つ一つバラバラな作業をさせても問題がないことが多いのですが、これらを組み合わせてやらせると要領よくできず、作業に支障が出てしまいます。

思いつきだけで行動して失敗したり、約束の時間を守ることができなくなったり、いつまでも決断できず段取りが悪くなったりといった症状が見られます。

 

■社会的行動障害
前頭葉と側頭葉の障害によって引き起こされることが多いのが社会的行動障害です。頻繁に怒鳴り散らすなど、暴力的で子どもじみた行動を起こすことが多いですが、逆に感情を失って無関心になるケースもあります。急に泣き出したと思ったら、急に怒り出したりして、周りを困惑させてしまうこともしばしばあります。

また、欲しいと思ったものを我慢できなくなることもあり、お菓子を食べ続けたり、タバコを繰り返し吸い続けたり、手元のお金がなくなるまで散財してしまったり、といった症状が見られることもあります。

高次脳機能障害の申請のポイント

障害の中でも「記憶力の低下」が大きな評価ポイント

高次脳機能障害には、失語症・記憶障害・注意障害・失認症・失行症・地誌的障害・遂行機能障害・行動と情緒の障害など様々な症状があり、一人ひとり異なりますが、主に、記憶の障害(記憶を脳にとどめておけない)、注意障害(注意力が保てない)、感情の障害(感情をコントロールできない)といったものがあります。

重症化してくると、日常生活に援助が必要になったり、労務に就けず収入が得られなくなったりしますので、障害年金の申請を検討してみたらいかがでしょうか?

高次脳機能障害の症状では、障害年金の認定上、「記憶力の低下」が一つの大きな評価ポイントとなっているようです。

例えば

・病院までの道順を忘れてしまう。
・薬を都度用意してあげないと飲み忘れてしまう。
・財布をどこに置いたか忘れてしまい、家族が隠したと疑う。
・行き慣れた場所にも行けないことがある。
・友人や知人の顔や名前が覚えられない。
・ちょっとしたことでイライラし激怒する。
・仕事でミスを繰り返し退職に至った。

などの「記憶力の低下」です。脳の損傷した場所によって、症状は変わってきますので、記憶力の低下が評価のすべてとはいえませんが、重要な評価ポイントであることは確かです。
記憶力の低下により日常生活に大きな支障が生じている場合は、受給の可能性があります。

 

初診日の特定・証明

初診日が違うと、申請手続きすべてが一からやり直しです。障害年金の申請手続きに慣れていない方は、初診日を特定することは結構難しいものがあります。

高次脳機能障害の初診日は、交通事故などの事故により、脳が傷つけられたり、圧迫されたりして脳挫傷や脳内出血を起こしたようなケースでは、事故により病院に救急搬送された日が初診日となります。

脳出血やくも膜下出血、脳梗塞などの脳血管疾患により、高次脳機能障害の症状が出るようになった場合は、脳血管疾患により初めて病院を受診した日が初診日となります。脳血管疾患で救急搬送された場合は、救急搬送された日が初診日となります。

ヘルペス脳炎やウイルス脳炎、低酸素脳症が原因で脳が損傷し、高次脳機能障害に至ったようなケースは、初診日の特定が難しいと思われますので、専門家のサポートを受けることをお勧めします。

 

診断書のチェックポイントと病歴・就労状況等申立書の作成

高次脳機能障害の「記憶力の低下」などの症状により、適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達及び対人関係、身辺の安全保持及び危機対応、社会性といった日常生活が、どれだけ制限されているかで等級が決まります。

診断書裏面にある「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」の項目について、記入漏れがないか十分に確認したうえで、申請することが大切です。

また、病歴・就労状況等申立書で発病から初診、障害認定日、現在に至るまでの経緯を丁寧に書き、かつ障害の状態がいかに重いかをアピールしましょう。

 

※高次脳機能障害やてんかんの診断書を書く医師は、精神科である必要はなく、脳外科・小児科(主にてんかん)・神経内科・リハビリテーション科・脳神経外科などの医師でも可能です。

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